元々、トヨタは全く希望してなかった会社でした。
大学時代、バンドで曲を作って歌っていたこともあり、何か自分で作る仕事がしたいなぁと思っていました。メーカーはエンジニアがものを作る会社で、事務屋はそのサポートが仕事になる、そう思ってメーカーには行きたくありませんでした。
それに、1985年当時、金融自由化とかITが話題になっていて、自動車産業はあまり成長産業とは思われていませんでした。
それが、先輩から電話がかかってきて、その先輩とあうことになりました。
その人は中高大のテニス部の先輩。憧れの先輩でした。その先輩が「うちの会社、おもろいで。もうちょっといろんな人に会ってみる?」と言われたので、それならと二次面接を受けることにしました。
ところが、その二次面接に寝坊。
電話してきた人に「どうする?」と聞かれ、「寝坊してしまって申し訳ないので、もういいです」とお答えしたら、そう言わずに来いよと言ってくれました。
それで、面接をうけたらクリア。理由は「君の正直なところが気に入った」
そして、最終面接へ。
当時は、最終面接前に、会社に入って何がやりたいかを書かされたのですが、元々希望してなかったので、やりたいことなんて何もない。隣の人を見ると、当たり前だけど何かをびっちり書いている。
さて困ったと頭を抱えましたが開き直って、
「会社に入っても風のように生きたい」
とだけ大きな字で書いて最終面接に臨みました。
それを見た人事部長の第一声は
「なんだ君は?会社に入って詩人にでもなるつもりかね?」
そう聞かれて、「いや、そういうつもりではなくて、会社に入っても自由に頑張りたいと思って書きました」と答えました。これはダメだなとあきらめていましたが、結果は合格。
トヨタを希望はしていなかったのですが、採用でお会いした人たちとはなぜか気が合いました。採用してくれた方々も何だかこいつはいい加減だけど、会社で一緒に働くと面白いかもなと思ってくれたのかもしれません。
会社を選ぶとき、何がしたいかとか、将来伸びるかとか、安定してるかを考えがちですが、会社と気が合いそうかどうかはもっと大事だと思います。
なぜなら、仕事をするうえで、その会社の価値観や風土に合うかどうかがとても大切だからです。結局、何をやるにしても価値観のあう会社のすることは、やっていて楽しい。それに、その産業が今後成長するかどうかなんて学生にわかるはずがありません。
だから、就職を決めるために一番大事なことは、とにかく会社の人にたくさん会うこと、自分を飾らず、素直にだすことだと思います。
そう考えると、会社選びは結婚相手を決めるのによく似ています。
必ず何か学べることはある。学んだことは次の人にわたす。
Everything is beautiful, nothing hurt.