キムライフ・キムライブ

もらったものは次の人に渡す。日常での気づき、過去のトヨタでの出会い・経験、大好きな本や音楽などからもらったものがどこかの誰かにわたり、もし役に立てればうれしいです。

「上野さんがお墓で泣いている」業績が悪い販売店に上司が語った言葉

収益の悪い販売店の改善を担当していた頃の話です。
 
その日は、販売店から経営再建計画を聞くミーティングでした。
 
売店の役員の方々が、経営計画を1時間くらいかけて説明されました。その計画は、きれいにまとまっているのですが、今ひとつ当事者意識が感じられないものでした。
 
こちらの出席は、ぼくを含め4人。役員、部長、地区担当員というフィールド活動でその販売店を担当している人、それにぼくだったと思います。
 
当事者意識が感じられない計画に対し、部長や地区担当員が、当たりさわりのない質問をし、アドバイスをし、それに販売店が答えるという流れが続きました。
 
その間、普段はよく話す当社の役員が、まったく何もしゃべりません。みんな、どうしたんだろう?と思っていたと思います。結局、何もしゃべらないまま、会議の終了時刻が近づいてきました。
 
そこで、販売店の社長さんが、当社役員に一言質問されました。
 
「今日は発言がありませんでしたが、最後に何かコメントはごさいますか?」
 
それに対し、ようやく口を開いた役員の第一声が、
 
「上野さんがお墓で泣いている」
 

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上野さんというのは、その販売店の亡くなられた2代目オーナーで、メーカーからも、販売店さんからも大変人望の厚い方でした。
 
経営再建計画の会議の最後に、その上野さんがお墓で泣いていると言われたわけです。そして、コメントはこう続きました。
 
「上野さんがお墓で泣いている。私は上野さんに合わす顔がない。今日は計画を聞かなかったことにする」
 
その発言で、会議の雰囲気は一気にお通夜みたいになってしまいました。何分くらい沈黙が続いたでしょうか?それはきっと2、3分だったと思いますが、とてもとても長く感じられました。
 
そんな沈黙は、突然、役員が販売店の社長に笑いながら話しかけて、破られました。
 
「この間、日本オープンをやった青森のゴルフ場でゴルフをして、海越えのホールにも行ったけど、あのゴルフ場は難しいねぇ〜」
 
その販売店の社長さんはゴルフがとても大好きで、お上手な方でした。
 
売店の社長さんは、その発言に藁をもすがる感じで、顔の表情を少しやわらげながら、
 
「そうですね〜。あそこは一度やりましたが、ほんと難しいですね〜」
 
で、うちの役員が、「そうだろぉ〜〜」
 
会議の静まりかえった重い雰囲気が、さーっと軽く明るくなりました。
 
その後、販売店さんは計画をもう一度真剣に作り直し、計画を実行していきました。
 
僕はその時まだ30代前半。厳しいことを相手の頭ではなく心に刺さるように言いながら、相手がほんとに反省したと思えば、スッと救ってあげるコミュケーションにただただ唖然。感動してしまいました。
 
また、メーカーのトヨタ自動車と販売店との関係というのは、先代の方のお墓がどうとか、およそふつうのビジネスでは使わないような言葉が出てくる関係であることにも感心しました。
 
その役員の方がよく言われていたのが、必死のコミュケーションという言葉です。仕事をするのは人、心のこもった真剣なコミュケーションは本当に大事だと思います。
 
必ず何か学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt