収益の悪い販売店の改善を担当していた頃の話です。
その日は、販売店から経営再建計画を聞くミーティングでした。
販売店の役員の方々が、経営計画を1時間くらいかけて説明されました。その計画は、きれいにまとまっているのですが、今ひとつ当事者意識が感じられないものでした。
こちらの出席は、ぼくを含め4人。役員、部長、地区担当員というフィールド活動でその販売店を担当している人、それにぼくだったと思います。
その間、普段はよく話す当社の役員が、まったく何もしゃべりません。みんな、どうしたんだろう?と思っていたと思います。結局、何もしゃべらないまま、会議の終了時刻が近づいてきました。
そこで、販売店の社長さんが、当社役員に一言質問されました。
「今日は発言がありませんでしたが、最後に何かコメントはごさいますか?」
それに対し、ようやく口を開いた役員の第一声が、
「上野さんがお墓で泣いている」
経営再建計画の会議の最後に、その上野さんがお墓で泣いていると言われたわけです。そして、コメントはこう続きました。
「上野さんがお墓で泣いている。私は上野さんに合わす顔がない。今日は計画を聞かなかったことにする」
その発言で、会議の雰囲気は一気にお通夜みたいになってしまいました。何分くらい沈黙が続いたでしょうか?それはきっと2、3分だったと思いますが、とてもとても長く感じられました。
そんな沈黙は、突然、役員が販売店の社長に笑いながら話しかけて、破られました。
「この間、日本オープンをやった青森のゴルフ場でゴルフをして、海越えのホールにも行ったけど、あのゴルフ場は難しいねぇ〜」
その販売店の社長さんはゴルフがとても大好きで、お上手な方でした。
販売店の社長さんは、その発言に藁をもすがる感じで、顔の表情を少しやわらげながら、
「そうですね〜。あそこは一度やりましたが、ほんと難しいですね〜」
で、うちの役員が、「そうだろぉ〜〜」
会議の静まりかえった重い雰囲気が、さーっと軽く明るくなりました。
その後、販売店さんは計画をもう一度真剣に作り直し、計画を実行していきました。
僕はその時まだ30代前半。厳しいことを相手の頭ではなく心に刺さるように言いながら、相手がほんとに反省したと思えば、スッと救ってあげるコミュケーションにただただ唖然。感動してしまいました。
その役員の方がよく言われていたのが、必死のコミュケーションという言葉です。仕事をするのは人、心のこもった真剣なコミュケーションは本当に大事だと思います。
必ず何か学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt