ヘールボップ彗星は1997年に地球に接近し、すごく明るく見えた彗星、ほうき星です。2500年に一回地球に近づくということで、その当時、すごく話題になっていました。
その頃の担当役員がみんなが集まる会議で必ず聞いていた言葉が、
「君はヘールボップ彗星を見たか?」
見てませんと答えるとなぜ見ないんだ?早く見なさいと言われていました。
仕事の会議で、どうしてそんなことを繰り返し聞くのか当時はわかりませんでした。みんなまた同じことを言ってるよ、おかしな人だなぁと言ってましたし、それって、今日はいい天気ですねとか、寒いねとか、会話の糸口みたいなものなのかなと思っていました。
でも、違いました。そのわけをご本人に聞いたら、こんな答えがかえってきました。
「営業というのは、人の気持ちを動かす仕事だ。そのためには、常日頃、人が心を動かすことにアンテナをはって、なぜ、そのことが今、心を動かすのか知らなければいけない。
これだけ、日本中が大騒ぎになっている彗星を見ようとしないのでは、今の人の気持ちなんかわからない。
彗星を見て、2500年に一回しか見ることのできないほうき星を自分の目で見て、生きててよかったなぁ〜って感謝の気持ちを感じること、日本中がなぜ大騒ぎしているのかを自分なりに理解することは、とても大事なことだ。」
そう教えてくれました。そういうことだったのかとすごく感心したのを覚えています。
仕事が忙しくなると、ついつい日常のことに無関心になったり、感心したり感動したりする余裕がなくなってしまいます。
好奇心を失わず、人が面白いとか、好きと言ってることをとにかく自分で体験してみることは営業の仕事のためだけでなく、人としても、とても大事だと思います。
成長するとは変わること。自分には関係ない、わからないと言って知ろうとしなくなったり、体験しようとしなくなると、人は変わることができなくなり、老いるのだと思います。
「最近の若いもんは」とか、「俺にはわからん」と言い出したら危険信号です。
また、とてもキレイなものを見て感動することは、人の心にとてもいいこと、必要なことだと思います。
何年か経って、採用の責任者をしていたころ、悩んでいる部下がいました。忙しい採用面接の一日が終わった時、東京ビルの窓にはきれいな東京タワーの夜景が見えました。その時、ヘールボップ彗星の話を思い出して、彼女に言いました。
「東京タワーきれいやなあ〜、きれいな東京タワー見て、キレイだなあって感じることも大事だよ」
その言葉はちょっとはその部下の役に立ったようです。
必ず何か学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt