このことは書くかどうか迷いました。心に秘めて書くべきではないという方もおられるようにも思います。
でも、自分の人生の中で忘れることのできない、忘れてはいけないこと。自分があの時どうすればよかったのか?未だにわかりませんが、もし、同じような状況になる人がいたとしたら、自分の経験も何かの役にたって、救われる人もいるかもしれない。そう思って書くことにしました。
自分の上司が自殺した話です。
優秀な人でした。そして、とても優しくて、まじめで、責任感が強く、義理がたい人でした。
その人は一番で昇格して、ぼくの上司に異動してこられました。一番に昇格して、重要ポストにつかれたので、役割を果たさなければいけないという責任感と、会社に恩返ししなきゃという思いをとてもとても強く持たれていました。
異動は1月なのですが、1月は大きな会議があったり、年間の予算企画をしなければいけなかったり、一年のうちで最も忙しく、大事な月です。しかも、その年は2000年。例年1月に行われる全国会議はミレニアムを祝う特別な大会議でした。
そこに責任者として、いきなり来られて苦労しないわけはありません。最初は元気だったのですが、なかなか実力がご本人が思うように発揮できない日が続き、そのうち、どんどん表情が暗くなっていきました。
業務に少し支障をきたすようになってきたので、自分も含めて、まわりの人は、ご本人をはげましたり、気持ちを安定させるために休んでくださいとお願いするようになりました。
とにかく優秀な人でしたから、いずれ必ずできるようになるとみんな信じていたからです。
ところが、ご本人は
そうじゃないんだ。気が病んでるわけじゃないんだ。がんばってるけどダメなんだ。
そう繰り返しておられました。
そして、二人でまた同じような話をした二日後、自分で命を絶たれてしまいました。
ショックでした。
理由は誰にもわかりません。
ご家族はただただ身を震わせて泣かれていました。間違いなく、魅力的な方でした。すばらしい夫であり、あこがれのお父さんだったと思います。
家で妻と話していたら、
まわりにがんばれってはげます人はいたけど、わかるわかるといって、ただ聞いてあげる人がいなかったのね
と言われました。
それが理由なのか、本当にいなかったのかははわかりません。ただ、みんなできる人だと思ってましたから、自分のまわりにただただ聞いてあげる人がいなかったのは事実です。
それから、ずいぶん経って、知り合いの人で、優秀な息子が少し成績が伸び悩んでいた時に、がんばれよと言ったことがキッカケで、その子がぐれてしまったという話を聞きました。
その息子さんは、精一杯頑張っていたそうです。なのに、成績が落ち始めて悩んでいた時、もっとできるだろ。がんばれよってお父さんに言われ、心が折れてしまったそうです。
がんばれって、人をはげますいい言葉だけど、その言葉ですごく傷つく人もいる。
人に寄り添うってむずかしい。
今回はいつもの締めくくりのフレーズはやめときます。