トヨタには、自己研鑽休暇という休暇制度があります。
ねらいは、会社をはなれて視野を広げ、新しいことへの感性と企画力をやしなうことです。
ぼくは、2003年の夏、一週間、ニューヨークに行きました。テーマは自分を入社当時の自分にリセットすること。
自分が若い頃から大好きな芸術にふれることで、感性をリセットしようと思ったわけです。
実際にふれた本物は素晴らしかったのですが、自分が一番感動したのは、そのことではありませんでした。
一番感動したのは、ニューヨークが本当にグローバルなこと。街には星条旗がいたるところに掲げられ、あらゆる人種、国の人たちが歩いていました。日本とは大違いです。
国民のほとんどが日本人である日本という国は、日本人が集まっているということが国のアイデンティティになりますが、アメリカはそういうわけにはいかない。だとすると、アメリカという国は、何で成り立っているのか?それは夢なのではないか?
その夢をつかめるルールがオープンになっていて、誰でもそのルールの中で頑張って成果を出せば、夢が叶えることができる。その事実に人が集まり、それが国になったのではないか。
では、そのルールとは何か?それがわかったと感じた出来事がありました。
大リーグ、ヤンキーズの試合を観に行った時のことです。
試合は松井がホームランを打ってヤンキーズの勝利。大満足でしたが、その出来事が起きたのは7回の攻守交代のときでした。
グラウンドキーパーの人たちが整備に登場しました。キーパーの人たちは、ただ、整備するだけでなく、少し踊りながら楽しそうに整備をします。驚いたのは、そのキーパーの人たちが退場する時です。
グラウンドキーパーが帰る時、スタンドの観客が全員スタンディングオベーションで拍手したんです。
日本ではグラウンドキーパーの人たちに拍手するなんて見たことがありません。
その時、思ったんです。いろんなところから夢をつかむために頑張っている人たちは、一人一人が自分の果たすべき役割を果たすことで夢に近づくと信じて精一杯生きている。
だから、グラウンドキーパーが楽しそうに踊りながらグラウンドを整備する姿を観客全員がリスペクトする。
夢をつかむルールとは、役割を果たすことなんだと。
当時、トヨタには真のグローバルカンパニーになるという方針がありました。真のグローバルカンパニーとはなんだろう?
ニューヨークに行って、その条件がわかった気がしました。
それは、
まず、国籍にかかわらず頑張ればつかめる夢を示していること。
次に、その夢をつかむためのルールがはっきりしていること。
そして、頑張っている人同士がリスペクトすること。
この3つが揃ったとき、世界中から夢をつかむために人が集まってくる。そして、国や企業はグローバルになるのだと思いました。
必ず学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt