36年乗り続けて突然動かなくなったクラウンをよみがえらせた話を書きました。
初代クラウンなど古いクラウンを全国のトヨタ店が一社一台よみがえらさせて走らせたら面白いんじゃないか
と盛り上がり、約50台のクラウンをよみがえらせて走らせるプロジェクトが始まりました。
よしやろうって、あまり深く考えずに決めてしまったのですが、それからがたいへん。
まず、クルマを見つけなくてはいけない。クルマを見つけたら修理をしなければいけません。修理といっても、なかにはボロボロのクルマもありますから、
全部分解して、錆びてダメになってる部品は手づくりで作りなおし、それを組み立てて、もとにもどしていかなければいけません。
運転するのにも神経を使います。もちろんマニュアル。パワステなんてないので、ハンドルがおもい。止まってるときにそのハンドルを無理に回そうとすると、ハンドルの部品がこわれてしまいます。
なかには、大切にしていたお客様からゆずりうけたクルマもありました。
たとえば、初代クラウンをお亡くなりになるまで乗り続けられたお客様のクラウンです。このままスクラップになるのは忍びないと販売店さんにこの車を多くの方に見せて欲しいと託されました。
最初は難航していたプロジェクトでしたが、進むにつれ、そんなお客様の思いにふれ、クルマをなおしているうちに、創業の頃の苦労を知り、クルマをピカピカに治したいというエンジニア魂に火がついて、どんどん盛り上がっていきました。
最後は、8月、クラウンをずっとつくり続けている元町工場にすべてのクラウンが勢ぞろい。
元町工場の方は初代クラウンのラインオフ式のお祝いゲートを手づくりで再現。元町工場で出走式、東京まで430キロの道を走破。
こわれないように、クルマの音、ハンドルやシートから伝わる振動、においに注意して、エアコンがないので、窓を開けて、風を感じながら、まさに五感を使って運転して、川崎から多摩川を越える六郷橋を渡ったときは感動しました。
酔った勢いで始まったプロジェクトでしたが、うまくいって、あらためて、
クルマという商品の持つ力のすごさ、お客様や整備するエンジニアがクルマにこめる思いの強さを強く感じました。
モノからコトへと言われますが、クルマという商品には、そのクルマをつくる人の気持ち、乗る人の気持ち、整備する人の気持ちが入りこんでいる。コトとは経験、気持ちです。そういう意味では
クルマというモノ自体が、すでにコトなのかもしれません。
だから、クルマには魅力がある。そんなクルマを大切に、なくならないようにしたいなと思います。
必ず学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt