人に何かを伝えるというのはむずかしい。
いいことを言っているのだから、聞かないのは相手が悪いと考えてはいけない。相手が聞かない時は、伝えるほうが悪いと考えろ。
とよく言われました。
入社した頃は、会議資料をつくるのに、資料の1行1行にこだわって、長いときは一行に10分くらいかけて、当時の部長がチェックするのにすごく驚きました。
まずは、それぐらい
伝える内容について考え抜かないといけません。そして、いい内容はシンプルでわかりやすいものです。
でも、シンプルということは、「要はこういうこと」って言えるくらいつきつめないとできない。だから、シンプルにするのは結構たいへんなこと。
僕の場合は、伝えたいことを考えるとき、その一分間ストーリーを考えるようにしています。新聞の見出しをつながるようなイメージで、問題解決ストーリーにそって、現状はこう、あるべき姿はこう。だから課題はこう、解決するためのポイントは三つ、対策はこれというように1分間ストーリーをつくります。
つくれたら、今度は自分で自分自身を他人にみたてて、何回も何回も話します。
これで、わかるか?Aさんはどうか?Bさんはどうか?よし、いけると納得いくまで何回も話します。
そうやって、
伝えるストーリーがきまったら、今度は伝える方法を考えます。一言で伝える方法といっても、すごいバリエーションがあります。
どこで、どれくらいの時間、誰が、誰に、どうやって、伝えるのか?
たとえば、変えよう、変わろうというメッセージを伝えたいとき、ただ、その背景、変わらなければいけない理由、新しい方向などを言葉で説明しても、なかなか伝わらない。
変わろうといっていても、いつもと同じ場所で、いつもと同じ人が、いつもと同じように話すと、何を言っても、いつものとおりだなという印象で聞いてしまう。
人は言葉だけを聞いて理解するわけではありません。
伝え方は、言葉だけでなく、伝えられる人が感じることすべてを伝えたい内容にあわせてどうするべきかを、考えないといけません。たとえば、同じ内容でも、課長が説明するのと、社長が説明するのでは、まるで相手の受け取り方はかわります。
また、自分の情熱を伝えたいのであれば、資料を説明するだけではいけません。語らないといけない。人の目を見て話さないといけない。
説明だけでは気持ちは伝わらない。好きな人に自分が好きだということを説明する人はいません。人は言葉だけでなく、その語り口を聞いている。スティーブ・ジョブスはプレゼンではアドリブで話しているように見えますが、練りに練った原稿をアドリブに聞こえるくらい自然に話せるように、100回以上練習していたそうです。
そして、伝わるまで何回も同じことを言う。
その繰り返しの中で、人は伝える人の本当を感じ、聞くようになるのだと思います。
昔、必死のコミュニケーションが大切だと教えられました。
必死のコミュニケーションとは、伝えることと伝え方を細かいところまで考え抜いて、そして、心から自分の言葉で語る。それも何度も何度も。
必ず学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt 。