会社にはいって、今の奥さんと遠距離恋愛をしていた頃の話です。
婚前旅行では現場はおさえられませんでしたが、疑いは晴れず、交際は反対されていました。なので、彼女と電話できるのは深夜です。当時、携帯電話を持っていなかったので、
会社の寮の近くの電話ボックスで、毎晩深夜に長電話をしていました。
その日もいつものように長電話です。
電話をしていると、電話ボックスの前に一台の車がとまり、ひとりの男が降りてきました。
黒いスラックスに白いシャツ、あたまは若いのにつるっぱげ。いかにもそのスジの人のようないでたちです。
こわいなぁ〜と思いながら電話をしていたら、その男はいなくなりました。
ホッとして電話をつづけて、電話を切ってボックスを出ようとふりかえると、なんとそこにさっき車から降りていなくなった男がたっています。
驚いてボックスをでると、その男が
「おい、にいちゃん。ちょっと待っとれ」
と言って、電話をかけはじめました。待ってろと言ったのに、電話をはじめたので、もういいのかなと思って、歩いて寮に向かっていると、後ろからさっきの男が
「こら!待っとけ言うたやろ!」
と言って追いかけてきました。そして、
「にいちゃん、どうしてくれんね!」
その男いわく、僕の長電話で組事務所に報告ができなくなって、指をつめるはめになったと言うのです。そして、僕に聞いてきました。
「にいちゃん、家はどこや!」
この近くの寮だと答えると、
「ちがう!里を聞いとんじゃ!」
僕はすっかりビビってしまい、思わず
「きょっ、きょっ、きょう〜とです」
どもってしまいました。
そうこうしてるうちに、パンチパーマのアロハシャツの男が登場。
「あっ、どうも。アニキ」
とつるっぱげの兄ちゃん。アニキは素人さんをこわがらせたらあかんとつるっぱげの兄ちゃんをさとしたあと、僕に聞きました。
「にいちゃん、いくらもってるねん」
ここでうそをつくと大変なことになると思いました。その日は給料日前で、財布の中には全財産15000円。正直にこたえると、
「わかった。じゃあ〜15000円で許したろ」
ずいぶん安い指をだなぁと思いながら、15000円全部払うと明日のお昼ごはんのお金持ちなくなってしまいます。
それで、僕は事情を話して、
「5000円でどうでしょうか?」
と値切ると、
「よしわかったと5000円で許したるわ」
その時はラッキーと思いましたが、翌朝起きたら、5000円だって払う理由なんてないことに気づき、ちょっと腹が立ちました。
こわいお兄さんには要注意です。
必ず学べることはある
学んだことは次の人にわたす
Everything is beautiful, nothing hurt